賭博師は祈らない 感想 ネタバレ

賭博師は祈らない (電撃文庫)
賭博師は祈らない (電撃文庫)
《Amazonからのあらすじ引用》
第23回電撃小説大賞《金賞》受賞作品!

十八世紀末、ロンドン。
賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
――それは、奴隷の少女だった。
喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。


第23回電撃小説大賞《金賞》である『賭博師は祈らない』のネタバレありの感想です。

ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想の前には注意書きをおいております。


ネタバレなしの感想



本作、『賭博師は祈らない』は電撃小説大賞《金賞》受賞作であるという事より、

ヒロインが奴隷であるという点がネットで話題となっていたかと思います。

Web小説でよくある奴隷ヒロインなんじゃないのか?という疑念もありましたが、

ヒロインが奴隷であるということに意味はあったと思います。

奴隷という虐げられた社会的弱者であり、主人である『ラザルス』の庇護なしでは、

『リーラ』は生きていくことが出来ないという状況でした。

だからこそ、『ラザルス』も成り行きから買った『リーラ』を投げ出すことが出来ず、

『リーラ』と生活をともにすることとなったのです。

これが孤児でしたら孤児院や教会へ預けるところまでで、

『ラザルス』が共に生活するまでにはならなかったと思います。

『ラザルス』という人物が厭いながらも面倒をみることを止めない立ち位置として

奴隷のヒロインと言うものが導入されたのでしょう。


奴隷という境遇になり、虐げられ、声も奪われ、世界に絶望していたヒロイン『リーラ』

『リーラ』は常におびえ、無気力であり、人の善意・親切すら信じることが出来ないほどでした。

そんな『リーラ』が主人公『ラザルス』との暮らしの中で、

徐々に『ラザルス』のちょっとした善意・新設に触れていく中で心を開いていき、

信頼を寄せていく姿を見せていきます。

恋愛方面での結びつきではなく、主従関係や家族関係的な結びつきと思います。

『リーラ』と『ラザルス』共に欠けてしまった部分を互いに互いが補い合い、

気付けば互いを必要に思えるようになっていました。

この徐々に2人が距離感を詰めていく過程を読者がみているからこそ、

最後の大勝負を挑む『ラザルス』の決意に共感を覚えますし、

『ラザルス』の戦いに胸が熱くなるのだと思います。


『ラザルス』は一見、無気力かつ厭世的に思われる人物ですが、

彼の芯となる部分には、自分の力で成し遂げるという行動力と気力があります。

そんな『ラザルス』が、奪われた『リーラ』を取り戻すため、大きな勝負に挑みます。

タイトルにもある『賭博師』としての『ラザルス』の力をみせる展開には熱くなりましたし、

勝負での駆け引きとその勝負の結末は満足のいくものでした。


1冊で綺麗にまとまっていますので、未読の方は是非読んでみてください。

どちらかというと『リーラ』と『ラザルス』の心の交流がメインとなっていますが

ギャンプルの駆け引きもありますので、どちらか興味がある人なら楽しめると思います。


それでは、ここから下はネタバレ注意になります。

賭博師は祈らない』のネタバレありの感想になります。

未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。



ネタバレありの感想


リーラとラザルス


『リーラ』の変化、『ラザルス』心を開いていく部分は分かりやすいのですが、

『ラザルス』側の変化は素直じゃない分分かりにくいですね。

でも、分かりにくい中にも『リーラ』に対する想いが強くなっているのが分かると

分かりにくい分、余計にニヤニヤできました。

一つは、『リーラ』が薄着であることに気づきながらも特に何もしなかった『ラザルス』が、

後に『リーラ』のために一般的な労働者の半年分の収入である10ポンドを使うところ。

もう一つが、教会に『リーラ』を預けるかどうかをコインを投げて決めるところですね。

コインを投げるところは、どちらにしても表が出るようにしてるんだろうなと思っていましたので、

ラストシーンで判明した時は、驚くより納得でしたけどね(笑)


「どうでもいい」というのが『ラザルス』の口癖でしたが、

『リーラ』のことを「どうでもよくない」と認識していく過程は胸が暖かくなりました。

最後の勝負


理不尽な暴力で奪われた『リーザ』を取り戻すために、賭博場を敵として戦う『ラザルス』

当然、戦うといっても暴力ではなく賭博で挑む訳ですが、結末は納得でしたね。

理不尽な暴力で『リーザ』が奪われたことからも分かりますが、

たとえ賭博で大勝したとしても結局は暴力で取り戻されるのは明白です。

となると、目標である『リーラ』を取り戻し、『ラザルス』と『リーラ』に危害を

与えられないようにするためには、目の前の賭博に勝つだけではダメなのです。

別作品ですが『嘘食い』でいうところの

「ギャンブルに勝利する知力があっても、自らを護れる程度の暴力がなければ、

相手に殺されるだけであり、お互いに対等の暴力をもって初めて勝負が成り立つ」部分です。

暴力を持たない『ラザルス』が、どう対処をするかと思いながら読んでいましたが、

『ラザルス』が行った目標達成の手段はお見事ですね!


目の前にいるディーラーとの勝負は、対人の駆け引きをみせて賭け事の面白さを描きつつ、

その面白く描かれた賭け事自体をブラフとして、真の敵である賭博場のオーナー相手に

冷静な損得勘定からの駆け引きを挑んでいたのですから。

賭博場のオーナーにとっての『リーラ』の価値と、賭博場での損失を測りにかけさせるのは、

『ラザルス』の真骨頂だと思います。

常に冷静に物事を運び、決して運に身を委ねることなく闘う姿は熱いです。

『ラザルス』が運に身を委ねることがないことこそ、

物語の冒頭に描かれていた「賭博師が守らなければいけない3つのこと」で語られなかった

最後の一つである『祈らない』につながります。

この最後の一つは作品のタイトルにもつながっていますので、

クライマックスでタイトルにつながる構成は美しく思いましたよ。


賭博場のオーナーと決着をつけたため、賭け事自体の勝敗の結末はわからないままでしたが、

あれを白黒はっきりさせるのは野暮の極みだと思いますので、触れないのが正しいですね。

結末の余韻を味わうのに余計なものは必要ありませんから!


物語がきれいに終わっていますので、続刊は出ないんではないかと思います。

作者の『周藤 蓮』先生の新たな物語がでましたら、購入して感想を書こうと思います。

もちろん、『賭博師は祈らない』の続刊が出たときも、購入して感想を書こうと思います。

関連記事
賭博師は祈らない 1巻 感想 ネタバレ
賭博師は祈らない 2巻 感想 ネタバレ

おすすめ
ギャンブル物の漫画でお勧めをと考えたら、嘘食いがお勧めです。

ギャンブルの題材とするゲームも面白いですし、
そのゲーム内での駆け引きはよく考えられており、
駆け引きとブラフの真相が分かった時には驚愕とともに面白さを感じます。

『賭博師は祈らない』の感想にも記載していますが、
ギャンブルを成立させるための暴力部分も熱く描かれていますので、
バトル物としても楽しめますよ!

今なら期間限定無料で読めますので、是非読んでみてください。
見直すと今の絵柄とずいぶん違うな(笑)


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この記事へのコメント

  • えたんだーる

    無事に2巻目が出たので、そちらへの感想も期待しています。
    あとがきや2巻の終わり方からすると、3巻目も出そうですね。
    2017年09月01日 17:03
  • くじらさん

    えたんだーるさん、コメントありがとうございます!

    1巻のストーリーがあまりにも綺麗に収まっていましたので、2巻目で余韻が壊れるのを恐れていました。

    ですが、えたんだーるさんに感想を期待いただけていると聞いて、手を出してみる気になりました。
    読み終わりましたら、感想をあげさせていただきます!
    2017年09月03日 15:20

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