〈小市民〉シリーズ 巴里マカロンの謎 感想

ミステリーズ! vol.80
ミステリーズ! vol.80
《米澤先生のtwitterからあらすじ引用》
小鳩くんと小佐内さんは名古屋の洋菓子店にやって来た。目当ては三個一セットのマカロン、ところがちょっと目を離した隙に、三個のはずのマカロンが四個になっていた。テンションが上がりすぎていた小佐内は、どれを注文したのかどうしても思い出せない……ならばここは、推理の出番です!
https://twitter.com/honobu_yonezawa/status/808185349147004928


〈小市民〉シリーズ 久々の新作 『巴里マカロンの謎』の感想です。

本当に久しぶりの新作ですね。

前作『秋期限定栗きんとん事件』の刊行が2009年2・3月ですから

ほぼ8年ぶりの新作です。

今回の事件は小鳩君と小佐内さんが1年生9月の頃のお話です。

時系列的に『春期限定いちごタルト事件』と、『夏期限定トロピカルパフェ事件』の間です。

巴里マカロンの謎は、将来予定されている『冬期限定』の一部を成すものではありません

と米澤先生のコメントがありましたので、

『冬期限定』が出る前に〈小市民〉シリーズの短編集が出るかもしれないですね!


あと、作品内容以前の愚痴になっちゃいますが、

ミステリーズ! vol.80』全然書店に置いてないですね。

近辺の大型書店で全く見当たらず、そもそも入荷もされていませんでした。

慌ててAmazonで注文して購入できましたが、今日時点(12/17)ですと

Amazonでも3週間~6週間街になっていますので、全体的に品薄みたいですね。

普段から買ってないお前がいうなと怒られそうですが、

できたらKindle版を出していただけると読みたい人の手元に届くんですが。


といった作品内容に関係のない愚痴はここまでにして、本作についてですが

久々の小鳩くんと小佐内さんでしたが、嬉しいことに昔通りの2人の姿がありました。

作品の方も、甘くて美味しそうなスイーツを切っ掛けとした事件の中に、

苦くて向き合うのが辛い人間関係、家族関係が動機として潜んでいる

これまでと同じテイストの〈小市民〉シリーズに仕上がっています。


3つ頼んだはずのマカロンが4つに増えているというちょっとした謎、

その謎を解き明かしていくことで現れる動機は結構なビターテイストでしたが、

読後感が悪くないのは小佐内さんの犯人への対応と、

締めにあるスイーツを食べながらの2人の会話の内容が軽やかだったからでしょうね。





それでは、ここから下はネタバレ注意になります。

『巴里マカロンの謎』 のネタバレを含む感想を書いていきます。

未読の方や、ネタバレを見たくない方はここで引き返すことを推奨いたします。




久々の小佐内さんでしたが、変わりないですね。

楽しみなスイーツを前に興奮して小鳩君にマカロンの説明する姿は可愛いですし、

実物のマカロンを前にしてふにゃふにゃな笑顔になる姿も可愛いですし、

狼になる小佐内さんを想像できないくらいに可愛いですわ。

ただ、そこは小佐内さん。

楽しみなマカロンを目の前にして手を出せない状況となるや、

相互関係の協定を脇に置いて小鳩君に謎についての会話し始めますから。

目立たないでいる協定よりも、スイーツの方が大事という分かりやすい理由です。


誰がマカロンを3つから4つに増やしたのか?と、

小佐内さんが頼んでいない4つ目のマカロンはなんだったのか?は、

割とあっさりわかりますね。

物語の本筋がそこにないからって理由だと思います。

物語としての本筋の謎は、『何故』マカロンが1つ増えたのか?

つまりは、Whydunit の部分こそが大事で、犯人が分かってからが山場です。


犯行の動機自体は、母が死んですぐに再婚をしようとする父親に対する不満と、

家族を結果的に壊すこととなる女性に対する怒りと、

思春期の少女が再婚する父親に対して持つ不満としては無理もなく、

そこまで苦みは感じないのですが、父親の側の再婚に至る行動と考えには

ドロドロとした苦みを覚えました。

小鳩君と小佐内さんの推測が正しいとして、犯人にとっての母であり、

父親にとっての妻が亡くなる2ヶ月まえには結婚指輪を外していますし、

妻が無くなって半年後には地元に新店舗を建て、その店名に彼女の名前を冠するとは。

店舗の設計準備などを考えれば、妻が亡くなる以前に気持ちが離れていますね。

雑誌のインタビューで「休日は妻と娘にあって家族から力をもらっている」と

応えた言葉が寒々しく感じてしまいます。

新たに古城晴臣の気持ちが向いた田坂瑠璃子という女性も、

妻が無くなって早々に男の地元で店を店長を務めることが平気で出来る

その気持ちを考えると2人の関係に空恐ろしさを感じますね。


増えたマカロンの謎を推理するという軽そうに見える話の裏にある本質が、

大人の男女のドロドロとした恋愛関係と、苦い家族の話が隠れています。

そう考えると読後感がかなり悪く感じそうなものですが、

思ったよりも読後感が悪くないのは、

小鳩君と小佐内さんの会話で軽やかに締めているからでしょうね。

他人の恋より、スイーツに夢中というのは至言ですな。

私も週末にはマカロンと栗きんとん食べてこようと思います!!


あと小佐内さんの『私にひどいことしたわけじゃないし、年下にはやさしいのよ』という言葉は

秋期限定栗きんとん事件』を知っている側としたら、苦笑いにはなりますけどね。

哀れ瓜野くん……




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〈小市民〉シリーズ が約8年ぶりの新作が出たように、
〈古典部シリーズ〉も新刊が出ていますよ。
どちらのシリーズも中々新作が出ていなかったのに
今年に入って怒涛のように作品が発表されていてうれしいですわ。
来年には〈小市民〉シリーズ の新刊が出てくれることを願いつつ、
〈古典部シリーズ〉の新刊を読んで飢餓感を薄めますか。
いまさら翼といわれても【電子特典付き】<「古典部」シリーズ> (角川書店単行本)
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