【ネタバレあり感想】〈古典部〉シリーズ 箱の中の欠落 (米澤穂信) (文芸カドカワ9月号)

文芸カドカワ 2016年9月号<文芸カドカワ>
文芸カドカワ 2016年9月号<文芸カドカワ>
《汎夢殿からのあらすじ引用》
「福部里志の話なら夜の散歩ぐらい付き合うのも面白いが、副委員長の相談だったら委員会に持ち帰ってくれ」

ある日、夕食に焼きそばを作っていた折木奉太郎に電話がかかってくる。福部里志から、散歩をしないかという誘いの電話だった。折木は何かあると察し、焼きそばをさっさと平らげて里志と合流する。
 初夏の夜、街中を歩きながら、里志は学校であったことを話す。……総務委員会の仕事で生徒会選挙の開票に立ち会ったところ、投票総数が神山高校の全生徒数よりも多かったというのだ。
 誰がやったか、何故やったかはともかく、どうやってやったかを突き止めないことには再選挙もできない。困っているのだ、と里志は話す。
 折木は夜空を見上げ、
「帰った方がよさそうだな」
 と呟いた。


<古典部>シリーズの最新短編「箱の中の欠落」の感想です。

これまで単行本未収録短編は全て「野生時代」掲載でした。

そのため、読みたくても手に入らないって状況が多かったのですが、

この短編は電子雑誌である「文芸カドカワ」掲載のため、買い逃しがないので助かりました。

「文芸カドカワ」の10月号にも<古典部>シリーズの短編が載りますので、

11月発売予定の 『古典部中短篇集(仮題)』まで待てない人はぜひぜひ(ステマ)



さてさて、「箱の中の欠落」は、奉太郎たちが2年生の6月に起きた事件です。

生徒会長選挙の投票数が全校生徒数を上回っていたという謎を、

奉太郎と里志が夜の街を散歩しながら推理するという話でした。

推理の主題は「ハウダニット」(どうやったのか?)のかに絞られています。

「フーダニット」(だれがやったのか?)、「ホワイダニット」(なぜやったのか?)は置いておかれていますが、

作中でその理由は語られていますし、直接の推理こそありませんが

読者にも十分推測は出来ますので、あまり気にはならなかったですね。



里志から開票手続きの流れを確認して、奉太郎が導き出した推理については、

十分納得できる推理だったと思います。

読者も流して読んでいなければ十分推測できた推理だったと思いますから。

謎自体は難しくないことからの推測にはなりますが、本短編の主題は謎解きではなく

奉太郎と里志の交友関係や、時間の経過による移り変わりじゃないかと自分は考えます。



そう考えると、普段は一緒に行動していない2人が夜の街を推理しながら歩く描写も特別に感じますね。

常に一緒にはいないが、相手の気持ちをお互い察っする描写、言わなくても伝わる関係が見て取れて、

2人の友情や信頼関係ってものが伝わってきますね。

中学生時代にも、里志が夜に誘って散歩していたっていうのは「鏡には映らない」事件のことなんでしょうね。

昔から困ったとき何とかしたいときには奉太郎に頼っていたし、奉太郎もそれに応えていたっていうのがいいですね。



推理のヒントにもなった時間の経過による移り変わり

舞台となっている学校の変化もそうですが、それ以上に登場人物たちの考え方、気持ちの変化も

時間の移り変わりによるものを感じますね。

昔の奉太郎なら違和感に気づいても言葉にしなかったんじゃないか?という部分で顕著に感じますね。

もちろん奉太郎だけじゃなく、里志の委員会活動もそうですし、エルの立候補の部分もそういったものを感じます。

この短編の中で時間の移ろいを感じさせて、<古典部>シリーズとしての返還点も意識させているんじゃないでしょうか?

2年生の6月ということで奉太郎たちの学生生活も中盤、残りの学生生活を奉太郎たち古典部の面々はどう過ごし

どう変わっていくのか、それを楽しみにしてこれからの古典部シリーズを楽しみにしたいと思います。









さて、ここから下は、「箱の中の欠落」のネタバレを含む感想になります。

まだ未読の方は、ここで引き返すことをお勧めいたします。



クラスの増減を経験したことのある人にとっては、分かりやすい流れでしたね。

クラス名が数字じゃなくてアルファベットだったことで、ちょっと迷いましたが、

きちんと読んでいるひとなら最初のクラス会の手紙のところと、里志の話からすぐ分かったでしょう。

ちなみに自分は最初の手紙のシーンを深く考えていないかったので、あっと思いましたわ(笑)



不当に叩かれてしまった下級生の為に、義憤にかられる里志もいいですが、

里志が真意を話さず協力を求めたときに、水臭いと怒る奉太郎の姿もよかったです。

昔の奉太郎なら気づいても『やらなくてもいいことなら、やらない』のポリシーで

スルーしていたのかもしれません。

そう思えば、この二人の関係も高校生活での交友という時間の経過で移り変わっているのかもしれませんね。



夜の街を二人で歩くというシチュエーションのため、他の古典部メンバーは出てこないですが、

エルが生徒会長に推薦されていたという話題で登場していました。

エルは千反田家を継いだ時にプラスになるならという考えで検討していましたが、

常に将来を見据えて行動していますね。

「いまさら翼といわれても」で将来について揺らぐ事態がありましたが、

その考えはまだ変わっていないのかもしれません。

未来を見ていて現在に迷っているエルと、まだ未来までは見れていない奉太郎との認識・考えの違い

これがお互いに徐々に埋まっていくようになるのが今後の主題なのかもしれないですな。

二人の関係を考えるとき、この辺のズレが変わっていくのかを注目して続刊を見ていこうと思います。






その他、この短編で気になった点を以下につらつらと記載してます~

・最初の焼きそばの描写上手そうでしたね。
 手短にのポリシーの元そんな凝った作りではないのでしょうか、
 ソース味の面が想像できる旨そうな焼きそばの描写でした
 もちろん次の日に焼きそばを食べましたわ。
 
・里志と奉太郎が食べてたラーメンも旨そうでしたね(笑)
 焼きそば、ラーメンと旨そうなので夕食後に読むのは危険でしたな。
 もちろん次の日の夜にラーメンを食べに行きましたわ
 
・夜の街を友達と歩くというシチュエーションがいいですね。
 自分の高校時代もたまに友人とあてどなく会話しながら夜の街をあるいていましたので、
 そのころを思い出して懐かしい感じでした。
 あの頃はそうでもありませんでしたが、今思えば貴重なひと時を過ごせたものですな。
 その友人には感謝ですわ。


今回はこんなところで。
拙い文章を読んでいただきまして、ありがとうございました。


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上にも書きましたが、9月10日発売の文芸カドカワ2016年10月号にも
古典部短編が載るそうです。
今度は摩耶花にかかわる事件なようなので、女性陣がメインに出るのかな?
9月に短編を読んで、11月発売の単行本に備えようと思います。
文芸カドカワ 2016年10月号<文芸カドカワ>



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